事件簿
その弐

拾った財布で金を借りまくった男

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消費者金融街

財布を落とした場合は要注意

皆さんは財布やカバンを落としたときはどうしますか。
もちろん警察に届出するとは思いますし、もしクレジットカードを保有していればカード会社に連絡してカードの使用を止めるくらいのことはするでしょう。

財布は個人情報の山

しかしそれだけでは不十分です。
財布やカバンには運転免許証や健康保険証などが入っていることが多く、その人の個人情報の宝庫です。
もし悪い奴に拾われてしまった場合、それらの身分証明書と個人情報をつかって消費者金融でキャッシングをしまくられる可能性もあるのです。

次の事件は私が消費者金融で勤務していたときに実際に発生した内容です。

事件はある男性が財布を落としたとこからはじまります。
(※一部登場人物の心理描写や行動等 は実話を基に再現しています。)

免許証と名刺で落とし主になりすます

この事件の主人公はAです。

Aはある日、駅で財布を拾いました。
財布の中の現金は千円札が一枚と小銭が少々入っているだけでした。
しかし現金以外に、運転免許証、そして名刺が数枚入っていました。
免許証を見ると、持ち主はAと同世代の男性Bさん。

現金より重要な個人情報

Aは免許証をじっと見つめ、次に名刺を見ました。
免許証にはもちろん住所が記載されています。
名刺の名前も免許証と同じです。つまりこの名刺は財布の所有者Bさんの名刺であり、そこには勤務先が記載されていました。

財布の現金はわずかでしたが、Aは財布を警察に届け出ず、自宅に持って帰りました。

実はAは日ごろの浪費癖がたたり、消費者金融から借金をしていました。

財布ひとつで別人になりすます

Bさんという他人の個人情報を得たAは、数日後その運転免許証を持って信用金庫へ行き、Bさん名義の口座を開設しました。
次にその足で市役所へ行きBさんの「所得証明」を取得しました。
堂々と窓口で運転免許証を提示したA。市役所で取得できる各種書類。
さほど重要ではない書類も多々あります。毎日市民がやってくる中、所得証明程度の書類では、念入りな本人確認などしません。よほど外見がかけ離れていなければ意外と見逃してしまうケースも多いようです。
今回の窓口の担当者も免許証を見たのみで、Aの顔と免許証を照らし合わせることもなく、提示されたことだけ確認して、すぐに返してくれたようです。

今回Aが選んだ地元のローカルな信用金庫。顧客に高齢者が多く、窓口の担当者もそもそも別人など想定もしていなかったかもしれません。

Aはその免許証と所得証明、信用金庫の口座を使って、Bさんの名前で消費者金融に申込みをしました。

勤務先の在籍確認はイチかバチかでしたが、在職確認はできたようです。
名刺の勤務先にかけてくるので在籍は当然です。何かしらBさんの社内で噂は立ったかもしれませんが、Bさんの耳には入らなかったようです。
消費者金融としては確かに在職していれば構わないので、第三者に確認を取り在職確認は終了しました。

そしてAは偽って開設したBさん名義の信用金庫口座に振込みで融資を受けたのでした。

「すぐにお金を貸してほしい」といったケースが多い消費者金融では、契約書の取り交わしは融資後になることが多くあります。
後日、Bさんの家に契約書類が届きます。ここでBさんが不審に思い消費者金融に連絡していれば、もっと早く発覚したかもしれませんが、郵便はしばらく放置されたままになっていました。

詐欺師は神経の太さが勝負

いつまでも契約書類の返送がないので、Aの携帯に消費者金融から催促が入りました。
しかしこの電話によって、まだバレていないことを察したAは何食わぬ顔で「今、出張中なので戻ったら直ぐに送ります」と適当にごまかしさらに時間をかせぎました。

その間、同様の手口でAは数社からBさんになりすまして借入れをしたのでした。

事件の結末は

その後この債権の返済が滞り、消費者金融がAの携帯に電話しましたが、すでに解約されていました。
消費者金融はBさんの自宅に督促状を送り付けたところ、Bさんが身に覚えのない借入れだと主張してきたため、事件が発覚することになりました。

この手の事件の場合、消費者金融が自力でAを捕まえることはまず不可能です。
回収するとしたら、財布の落とし主のBさんからしかありません。

なりすまされた人から借金を回収できるか

当初、私は「身分証明書を紛失した貴方にも、善管注意義務違反で一定の責任があるのではないか」など、かなり無理スジの論理で、落とし主の責任を追及し、任意で返済の補填をさせるべく交渉していましたが、落とし主は自分名義で勝手に借入れされている負債が複数件あり、とても個人で手に負えないと判断したのか弁護士に依頼しました。

弁護士相手では無理スジの論理が通用するわけもなく、下手をすればこちらが損害賠償請求をされかねません。

よってあえなく融資した30万円の「債務は取り消し」と言う結論に至ったのであります。

刑事告訴する業者は少ない

今回の事件もそうですが、消費者金融で起こる金融詐欺の具体的な手口を見ると、警察が本気で捜査したら簡単に足が付きそうな、陳腐な手口であることがほとんどです。

しかしいくら詐欺被害にあってもほとんどの場合、消費者金融が刑事告訴することはありません。

刑事告訴は割に合わない

なぜかと言えば、そんなことをしても“割に合わない”からです。

経験のある方はわかると思いますが、刑事告訴は簡単には受理してもらえません。
相応の証拠資料を揃えなければならず、実際かなりの手間がかかります。
またそれだけの手間をかけて、犯人を逮捕出来てもお金が返ってくるわけでもありません。

ご存知のように、消費者金融1社から新規で借入れ出来る金額は50万円以下の少額で、せいぜい10万円~30万円程度です。
その程度の金額で、いちいち刑事告訴はやってはいられません。その為貸し倒れ処理をした方が合理的ということになるのです。
(この記事の事例についても、消費者金融側は刑事告訴を行っていません。)

結果、犯人は逃げ切ることとなり、のうのうと生活しながら、次の悪事の機会を伺っているのです。

身分証明書を紛失したら信用情報にも届出を

このようなトラブルを招かないために、身分証明書を紛失した場合は、各信用情報機関にも届出をしておくことをおすすめします。
そうすれば自分の信用情報に、身分証明書を紛失した旨のコメントを掲載することが出来るからです。

現在、消費者金融が審査をするには必ず、指定信用情報機関を利用した借入れ調査を行っているので、その効果は絶大です。
詳しくは各信用情報のHPで確認下さい。

・㈱日本信用情報機構(JICC)
https://www.jicc.co.jp/kaiji/comment/index.html

 

・㈱シー・アイ・シー(CIC)
https://www.cic.co.jp/declaration/index.html

また身に覚えのない請求を消費者金融からされるようなことがあれば、個人では対応せず、弁護士など専門家に委ねた方が無難です。
最近はコンプライアンス重視の会社が多くなってきていますが、かつての私のように無理スジの論理で強引に責任追及してくる業者がないとは限りませんよ。

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